| 名を呼ぶ。 | |
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さっきからやたら世界が朱に染まって見えるのは、何も地に沈む緋の光に照らされただけのものではないらしい。鼻はとっくに麻痺している。軋む骨はそれと知らずとも限界を訴えていたし、なにより、もう仲間の声が聞こえない。聴覚がイカレたせいだ。
― ・・・・お前が犬死したいんなら、私は別にかまわないがね。
それでも、どうか俺から刀を奪い取らないで。戦うことをやめさせないで。仲間がいるんだ。俺の助けを待っているやつらがいるんだ。もう少しで助けられるんだ。そのはずなんだ。まだ、動ける。まだ、剣を握れる。まだ、戦える。
― お前が死んでも、死んだ仲間は戻ってこないよ
初雪の降る静かな朝のことだった。
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