最後の約束

-39-

 

 

 深い闇の中を日番谷は走っていた。

 何処まで走ろうと、いっこうにたどり着かない道を、それでも日番谷は走っていた。

 視界を遮るものはなく、ただ暗い闇だけがずっとずっと続く道を、走り続けていなければいけないような気がしていた。

 決して、立ち止まることはなく。

 終わりのない道を行く。

 

 足はもつれて、息は耐えて、脈打つ心臓はうるさい。腕はとうに上がらなかった。血の匂いだけが鼻の先に残り、もう霊圧を辿る力さえ残っていない。それでも日番谷は斬魄刀を握り締め、痛みを通り越した体を引きずるようにして走り続けていた。

 

 あぁ、もう少しだけ。

 

 体よ、動いてくれ。

 足よ、立ち止まらないでくれ。

 瞼よ、閉じないでくれ。

 

 

 この戦いの果てに、

 二度と歩けなくなってもいい。

 二度と目が冷めなくてもいい。

 二度と戦えなくなってもいい。

 

 

 

 

 

 

 

 だから、どうか。

 最後まで戦わせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ・・、

 ひとりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 この場所で、

 俺はたったひとりだ。

 

 

 

 

 

 

 仲間はいない。

 

 

 

 みんないなくなってしまった。

 霊圧は辿れない。

 

 

 

 

 もう生きてはいないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 この闇の中で。

 俺は、たった独りだ。

 

 

 

 

 

 

(――・・・・・とりじゃないわ。)

 

 

 

 

 誰も失いたくなどなかったのに。

 本当は、ひとりになどなりたくなかったのに。

 手を差し伸べてくれた人さえ、守れない。

 

 

 

(ひとりじゃないわ!)

 

 

 

 一人だ。

 もう誰もいなくなったんだ。仲間は誰も。

 

 

 

(貴方は、ひとりじゃない!)

 

 

 

 だって、俺は。

 この道に続く先を、本当は知ってる。

 

 

 

 何処にも辿りつけやしないんだ。

 深い闇に覆われて。

 何処にも辿りつけやしない。

 

 

 

 この道の先で。

 あの人は死んだ。

 

 

 

 

 

 あぁ、そうだ。

 この道の先で、あの人は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もたどり着くことのなかったこの道の果てで。

 たった、一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、だから。どうか。

 立ち止まらせないでくれ。

 

 

 走らせてくれ。

 この闇の中で。

 

 

(・・・いかないで。戻ってきて。)

 

 

 俺はどうしても、この道の先に行きたい。

 この闇を抜けて。あの人の元に。

 

 

 

 こんな最後はあんまりだよ。

 最後まで戦わせてくれるだろ。

 そのために剣を捧げたんだ。

 その気持ちに、嘘はないんだ。知ってるだろ。

 もう一度、あの人に会えるためなら、なんだってやる。

 

 

 

 

(ここで、貴方の帰りを待ってる人もいるのよ!)

 

 

 あの人も一人だ。

 この道の先で、きっとあの人は今も一人だ。

 

 

 

 

 止めないでくれ。

 行かせてくれ。

 ここで、ひとりでいるくらいなら。

 こんな暗い場所に一人でいるくらいなら。俺は、

 

 

 

 

(・・・あぁ、だめ。・・・おねがい、消えてしまわないでっ。消えてしまわないで、声を、聞かせて。だれか、たすけて、あのひとを、たすけてあげて、おねがい、)