最後の約束

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 体の内側から何かをかきむしる様な熱の存在に気付いたのがいつだったか。

 それは人の声にも似ていて、ひどく不快なざわめきを残す。耳を伏せても消えていかぬそれらのざわめきは、しっかりと腹の奥の方に根付いて熱をもった。その存在を知る者も教えてくれる者も周りにはいない。ただ力を使うたび、熱の存在は増していく。

 やがて気付く。

 このざわめきはこの手が、奪ってきたものの存在。この身の奥に埋められた魂のくびきから、零れ落ちるひとかけらの命。

 

 魂の声。

 

 奪い、繋ぎとめられていくだけのものだったその存在は、飢えを満たす以上のものをこの体に与えていった。たゆたう熱は、暖かい。暖かい。暖かい。この暖かさは我をひどく揺さぶる。揺り動かされているものは一体なんだ。かきむしられていくものは。ざわめきに、耳をそばだてているものは。そうだ。それをきっと人はこう呼ぶ。

 

 心、と。

 

 

 どれだけの時を飢えと孤独で生きてきたか最早語れぬ。存在を厭うほどには永く、無知でいられた時はほんの僅かの生を独り生きながらえてきた。誰も我を覚えているものはいない。我を知るものは。我を呼ぶものは。

 

 孤独は、生まれた心を蝕み、苛み、腐らせてゆく。飽くるほどの狩り。戦い。それらに決して満たされぬ飢えがある事を、我だけは気づいてしまった。我だけは知ってしまった。仲間、と呼ぶものが死神に消されていくたびに、この心に刺さる痛みはなんだ。それらの仲間を思い出すたび、締め付けられるこの痛みは。死神に向けられるこの憎しみは。許せぬ。許さぬ。何故、腹の奥にすくうものだけが暖かい。ひたすらに暖かい。

 

 

 

 それを抱えてあとどれほどのときを一人、生きながらえる。

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、何故、

我にこの力を与えたもうた。

 

我をつくりたもうた。

 

 

 

 

 

 

 

この熱の存在を知らなければ、

孤独の意味は、知らずにいられたものを。

 

 

 

 

 

――藍染様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空に舞う翼を宿した子供を見上げて、獅子は吠えた。

 あの手に奪われた。腹の奥から失われた熱だけが、今はひたすらに恋しい。

 

 

 恋しい。